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ついに、とうちゃんになる。

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8月3日夜。
その日も蒸し暑かった。

7月31日の予定日を過ぎ、まだ生まれない状況に、
主治医のセンセイから「もっと歩きましょうね」と言われ、
1週間前から、街中を歩いている妻と、同行する私。

臨月によるむくみの影響で、僕のジョギングシューズを履き、
毎日30分~40分のウォーキングを繰り返していた。

この日は実家の母に届け物をして、それから街を遠回りに歩き、
約1時間、みっちり歩いた。
既に3100gを超え、これ以上お腹の中で大きくなったら
産みにくくなると言われて、
妻も真剣に、弱音も吐かずもくもくと歩いていた。

4日深夜。
2時ごろである。
突然「痛たたたたたたたたた」と妻の苦しむ声。

陣痛か?

「ワカラン。経験したことないから」

まだ冗談が言えると思っていたが、午前3時を過ぎると
その痛みが断続的にやってくる。

病院に電話してみたら、間違いなく陣痛と言われた。
ただ、まだ間隔が空いてるから、もう少し様子を見てくださいとのこと。

結局妻も僕も、ほぼ一睡もできず、朝がやってくるまで、
少しづつ間隔が狭まる陣痛の度に、妻は苦しみ、
僕は腰を揉みの連続で過ごした。

午前11時。
陣痛が6~7分おきになった。
ようやく病院から来てくださいと言われたので、
妻を乗せて、病院へ行く。

車中でも必死で痛みをこらえる妻。

こんな時、何もできないのが、男なんだな。
心で詫びつつ、クルマを走らせること約30分。病院着。

LDR室という、陣痛も分娩もできる部屋に入った。
ひとまず安心。

初産なので、ここからが長いと聞いていたし、
義母も来てくれたので、仕事に戻ることにした。

事務所に戻り、そして自宅に戻り、少し仮眠。
スタッフ運転のクルマを豊中に置き、再び新御堂を南下。

途中、義母から電話が入る。

「今、向かってます。」

ちょっと遅くなったけど、今夜は徹夜かなと覚悟してたので、
渋滞してる道を端端と走らせた。

事務所でスタッフを下ろし、病院には6時50分着。
7階に上がる。
受付で「すいません、LDRに入ってる柏原の・・・」

「ああ、さっき御生まれになった柏原さんの・・・」

「えっ???」


「先ほどお生まれになられましたよ。」


「げげげげっ!」

LDR室の前で、義母が手招きしている。

聞けば、6時過ぎに、急に産気づいて、そのまま緊急出産に
なったらしい。

あまりに急にお産が進んだので、妻の後処置が結構、大変だったのだが、
後で聞いたら、安産の部類に入りますね。との事。

しかし妻曰く、極限の痛みでギャァギャァだったらしく、
とても立ち会ってもらえるような、平和なお産ではなかったそうだ。
結果的に生まれる瞬間は、義母ですら立ち会えなかったらしく・・。

まぁ、結果よければ全て良しと思っている。

妻の処置の間に、助産婦さんに呼ばれ、子どものいる部屋へ。

「6時46分、3519gでした。元気な男の子ですよ」

「で・・・デカっ」

生まれたばかりで、血やら羊水やらがついてる状態のわが子を抱く。


なんて言ったらいいんだろう。


彼の鼓動が、自分の何かとシンクロしているような、


彼の温もりが、離れて処置を受けている妻の闘った痕跡を伝えているような、

そんな不思議な感動が、心から湧いてきた。


この10ヶ月、僕らはこの瞬間を待った。

これまでの不安のすべてが、喜びに変わった瞬間だった。

不安なんて、無い。
これから共に育ってゆく。

ありがとう。

生まれてきてくれた事に感謝。

暑さとだるさと、つわりと痛みに耐えて生んでくれた妻に感謝。

頂いた命をつなぐことができた。両親に感謝。


7年前に他界した親父の写真を持って行った。
いつもより、笑ってくれてるように見えた。